エッセイ

東京新聞 1999年5月29日掲載
風車◇いまどきの若いもんは
 神代の昔からこの言葉はずっと言われ続けている。そう思うときも確かにある。いつの時代にもジェネレーションギャップはつきものだ。しかし、邦楽界ではいまどきの若い者などと眉をひそめるようなことはほとんどない。
 むしろその「いまどきの若いもん」は数世代前の演奏家より技術水準がはるかに高いのである。もちろんそれがよい芸術家になるための十分条件とは言えないが、必要条件は備えているといえるだろう。
 僕のような世代は、権威主義や懐古趣味に陥ることなく、次世代の名人が続出できる環境を整えることが急務と考える。伝統芸能の衰退が叫ばれて久しいが、正しい耳と感性と、ある率直さを持って彼らを評価すれば、将来はそう悲観的ではない。われわれの財産である素晴らしい伝統芸能を永きにわたって伝えたいという気持ちは切である。
 幸い最近では邦楽専用の紀尾井小ホールができるなど明るさも見える。また六月十九日には東京オペラシティが邦楽の会を催してくれる。この会にも若く優秀な演奏家がたくさん出演してくれる。きっと良い演奏をしてくれるだろう。ぜひ、聴きに来て、エールを送っていただきたい。

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