エッセイ

思いつくままに…
『舟と琴』on YouTube

 以前から何曲か出していますが、このたびまた、ぼくの曲をYouTubeに上げました。

『舟と琴』
尾上墨雪:原案構成 今藤政太郎:作曲 藤舎呂船:作調
(2010年、紀尾井ホールでの今藤政太郎邦楽リサイタルより)

https://youtu.be/tyhA5MVVucI



この『舟と琴』は、親友の尾上墨雪さんから依頼されて作曲したものです。はじめは舞踊曲として作り、のちに演奏用にアレンジしました。

この曲は、古事記にある「枯野(からの)」という部分をそのまま歌詞に用いて作曲しています。

簡単にあらすじを申しますと、仁徳帝治世の頃、莬寸河(とのきがわ)という所の西に一本の高い樹がありました。その樹の影は、朝日に当たれば淡路島まで届き、夕日が当たれば高安山を越えました。ある時この樹を切って舟を作ったところ、ものすごく速く進む舟ができました。その舟で淡路島から宮殿のある難波宮に、良い水を毎日運びました。
やがて舟が壊れてしまった時、舟の木を使って藻塩を焼き良質の塩を大量に得たのですが、その木の芯はどうしても焼けませんでした。太古よりの命を繋いできた巨木には、自然の魂が宿っています。芯は、樹の魂そのものだったのでしょう。
そこでその芯をお琴に作って鳴らしたところ、お琴の音は、七里四方に響き渡り、人々を幸せにしたそうです。

木でスピードのある舟を作れるのは、科学技術というものです。その舟の廃材を利用して塩を焼いたことも、それだと思います。 しかし、このお話の芯にあたる部分は、木には魂があり、魂の塊を琴に作ると、たった一面の琴が七里四方の人々を幸せにしたということです。人々の最初の幸せは、琴に象徴された音楽だということなのだと思うのです。
改めて音楽の大切さを思った次第です。

そして、これに続けて演奏会当日のアンコールもアップしています。
人間国宝の堅田喜三久さんにも急遽参加してもらい、『勧進帳』の滝流しから演奏しています。
併せてお聴きいただけましたら幸いです。

注 : 『舟と琴』の「こと」には、古事記に従って、「箏」ではなく「琴」の字を使っております。

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