エッセイ |
思いつくままに…
腕っこきの現場の名人
ぼくは若い時に、駒井義之先生と花柳寿南海先生という二人の腕っこきの現場の名人に知遇を得ることができた。ずいぶんご一緒させていただいた。
駒井先生の本を見ると、理屈っぽいことがまるでない。それなのに、すごく面白く、流れるような本ができている。舞踊を作る立場からすれば、余白がたくさんあって自由に創作できるのだろう。作曲をする者にとっても同じことが言える。
そして、先生の本を作曲する人は、おそらく皆が皆、駒井先生の本を作曲する人の中で自分が一番良く作れたと思っただろうと思う。つまり、どんな作曲者にもフィットした。これは他には代えがたい才能である。
それでいて発想が柔軟で、何か勝手に意見を言うと「ああそうだね、それがいいね」と言ってくれた。
文化功労者などにも価する方だと思う。
同じことが寿南海先生にも言える。
「どういうふうに作りましょうか」と言うと、
「いいわよ、好きに作ってちょうだい」と言われる。実はそれが非常に困るのである。
作品の出来を、本や舞踊家のせいにできないのである。つまり「ぼくが作曲できない理由」を言い立てることができない。
いざ舞台にかけると、演奏のノリや発想がその踊りに合っているかどうかわからない。どう演奏してもピッタリに思えてしょうがなかった。
このお二人と出会えたことは、ぼくの生涯の幸せだった。
今回の「駒井義之 作 風」へのオマージュは、駒井義之先生、ならびに花柳寿南海先生への「オマージュ」とも言えるものである。そんなわけでこの曲を今回の創邦21作品演奏会に出すことに決めたのである。
今藤 政太郎
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