エッセイ

東京新聞 2004年7月29日掲載
風車◇三世 今藤長十郎先生

 先週土曜日、NHK教育テレビの芸能花舞台で、私の恩師である三世今藤長十郎先生の特集番組が放映されました。私宅へお稽古にみえているお弟子たちも巻き込んで、お稽古そっちのけで在りし日の先生の素晴らしい演奏とお姿を拝見しました。
 ふつう思い出というものは段々に薄れていくか印象だけが異常に肥大して、ビデオなどを見るとがっかりしてしまうことが多いのですが、先生の演奏はイメージ以上で改めて感激しました。
 その演奏にはほかに、すでに故人となられた名人和歌山富十郎師、篤学で知られた稀音家六多郎師、我が友今藤長之さん、そして私の父四世藤舎呂船等、錚々たる方々が出演している夢のような舞台でした。蛇足ながら私も三枚目の三味線に出演させていただいておりました。もうこのような舞台は二度と実現しないと思うと残念でなりませんが、あの舞台に出演させていただいたことは本当に幸せだったと思います。
 少し前には、先生と自分の力の差を感じるたびに落胆ばかりしておりましたが、あのような素晴らしい先生に教えていただき、接していただいたことを、それ自体が私の人生の宝物なのだと今更ながら思うのです。
 8月4日は先生のお命日です。改めてご冥福をお祈りいたします。