エッセイ

東京新聞 2003年3月29日掲載
風車◇和の文化

 先日あるTV番組を見ていた。幾つかの話があったのだが、その一つは目と耳をそらさずにはいられない内容であった。が、覚悟を決めて見ることにした。それは11歳の利発で素晴らしい少女の話であった。しかしその少女は、遺伝子の間違いで常人の8倍程の速さで老化が進むという運命を背負っていた。
 母親は挫けそうになりながらも愛情をふり注ぎ少女を育てた。少女もまたひどいハンディにもかかわらず運命と向き合って明るく命を全うしようとしていた。「今度生まれたら何になりたい?」と問うインタビュアーに「また私になりたい」と。戦慄にも似た感動を覚えた。
 話は変わるが、現存人類は遡ればアフリカにいたミトコンドリアイブなる一人の女性に行き着くという。つまり我々はたった一人の祖先を共有していることになる。話は戻るが口に出すのも恐ろしいようなハンディをもって生まれた少女とその母、それを温かく支える周囲。つくづく命の大切さを思う。
 それを見るにつけ、一人の共通の祖先をもつ人類がどうして殺戮を繰り返さねばならぬのか、悲しみでいっぱいである。我々の文化のキーワードは「和」である。伝統文化の精神が世界の平和に何とか役に立てないものだろうか。