エッセイ

東京新聞 2000年1月29日掲載
風車◇雪月花

 雪月花、花鳥風月、これは古くから日本人の美意識を端的に言い表した言葉であろう。古来、日本人は自然を慈しみ、自然を愛し、自然を神として大事にしてきた。
 現在行われている古典のほとんどは、男女の愛憎の機微や自然の美しさをうたったものである。それを除いてしまうと、あらゆる芸術の分野は限り無くゼロに近づくことであろう。
 自然を慈しみ、大事にする文化は我々だけのものではなく、世界共通のことではあろうが、欧米の自然環境は人間には相当厳しく、友であると同時に、克服すべき対象でもあったに違いない。
 それに対し日本では、自然は克服すべき対象というよりはむしろ友として、あるいは畏敬(いけい)すべき神としての存在の方が強かったのではなかろうか。欧米の石の家に対して、我々の木の家がそのことを雄弁に物語っていると思う。
 欧米とわが国の文化のどちらがより優れているかなどということではないが、欧米の文化はパワーが強力。その影響を受けない方が良いなどというのは暴論だが、我々の文化もまた、優れた資質を持った文化であることは間違いない。
 すべての文化がグローバリズムという名のもとに根無し草のような文化になってしまうのはどうであろうか。